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第75話

「き…もちよかった……」 全力疾走した後みたいに、肩を大きくあげて呼吸する。 そのまま涼真の上に倒れ込んでいた俺は最愛の人の腕に包まれた。 「…俺だって…気持ち…よかった…」 「ホント…?りょ…ンン」 その顔が見たくて顔を上げたら涼真の手のひらが俺の目を隠した。 「み…見ないで!恥ずかしから!」 「やだよ、見る!」 軽くもみ合って、子供の頃のようにじゃれついて…嬉しくて、それでいて気恥しい…幸せってこんな感じなんだなって思った。 だけどいつまでもイチャイチャしていたくても涼真には真咲がいる。 そろそろ涼真を真咲の所に戻してやらなくては…。 「もう戻る?」 「うん。俺、風呂入ってから真咲の所に帰るよ」 そうだよな、俺が身体を散々舐めまわしたからな…。 「ああ、そうだな。おやすみ涼真」 「おやすみ郁弥」 名残惜しいがまだ小さい真咲を大切にしなければ。 それは涼真と俺の願いだから。 真咲に隠れてこんな事していているが、これは見逃してくれ。 涼真と真咲は俺が全力で守るから…。 そう誓って、俺は目を閉じた。 真咲が入学するのは徒歩五分の近所の小学校。 優羽の長男夏羽が通っているところだ。 小学校の敷地内に学童保育があり、夜まで子供を預かってくれる。 真咲は夏羽と学校に通うのを楽しみにしていて、時々俺が買ってやったランドセルを背負い部屋の中をスキップしている。 時間って凄い。 カタコトでしか話せなかった真咲が一人前の子供になって学校に通うんだ。 もう、感動モンだよ。 入学式まであと一週間、俺はスキップする真咲をキッチンから眺めていた。

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