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第82話

「落ち着きなさい、真咲」 「は・や・く・た・べ・た・い!」 真咲の目がばら寿司に釘付けになって、瞳の中に♡が見えた…。 「たくさん食べな」 白のオーバルプレートに品良く盛り付けて真咲の目の前へ差し出すと瞳の中の♡が瞬いて、ヨダレがたらりと糸を引く。 「いただきま〜す!」 キラキラとした目で大きな口を開け、パクパクと食べ始める真咲。 「喉に詰まるからゆっくり食べて、ほら、お澄ましも飲んで…」 「んっ…このお汁美味しい!」 「ハマグリの潮汁、美味いだろ!」 「ホント、美味いよ!おかわりある?」 多目に用意しても男三人であっという間に平らげてしまった。 「あ〜美味かった〜。ご馳走様、郁弥」 「とと!美味しかった!ごちそうさまでした!」 「おそまつさま」 今日の真咲の食事量は涼真と同じ位。 涼真はそんなに食べるほうじゃないし、体躯もほっそりとしている。 比べて真咲は随分と食べるようになった。 よく動くせいか体に筋肉も付き始めたようだ。 「郁弥、俺が片すよ」 「うん、ありがと涼真」 夕食を終えると涼真は真咲に風呂に入るよう言い、食器類を流しに運びエプロンを付けた。 ストライプ柄のエプロン姿もすっかりと馴染んだ涼真はスポンジを手に取りこっちを向いた。 「そんなに見んな。ここんところ食器壊してないだろ」 「慣れたよね」 「おかげさまで」 「こうやって真咲も何でも出来るようになンだろうなぁ。寂し…あん?」 真面目な顔つきで涼真は俺を見ていた。 「郁弥には感謝しかないよ」 「…」 「俺、過ぎる位に幸せで…そんな資格なんて無いのに…」

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