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第117話
スーパーの前は広場のようになっていて俺と涼真は隅に置かれた赤いベンチに並んで座った。
膝の上にさっき買ったたこ焼きを乗せて。
袋の口を広げ串に突き刺して涼真の口元に運んだのだが涼真の手はやんわりとそれを拒んだ。
「ムリ…」
「…嫌いだった?」
「…違うって。ここどこ?」
「どこって…あ!ゴメン…」
さっきもつい涼真の頬を撫でて涼真に嫌がられたばかりなのに。
正直、誰も俺たちの事なんて気にしてないとは思うけど…涼真が嫌がる事は極力避けたい。
…仕方ない、俺だけ食べるか。
たこ焼きを二つ串刺しにしてふーふーと息を吹きかけた。
ソースの香りに口が緩み、口角から涎が溢れかけた。
「あっ…ふっ…!はふはふ…ぅんまい!」
まだ焼きたて感があって外側がカリカリしてるのもいい。
かつお節も青のりもソースとマヨネーズにまみれて口の中でたこ焼きの味に変化が出来るのも、いい。
「美味そう…」
「たべふ…?」
「…いや、いいよ。帰ってからにする。もう、早くスーパーで買い物!」
のんびりと食ってる場合じゃなかった…。
「行こっか」
あと一つだけ、熱っいたこ焼きをお行儀悪く口の中に入れて はふはふしながら涼真とスーパーに入った。
青果売り場から始まり、鮮魚、生肉と見て回る。
いつもの店と若干ラインナップは違うが商品構成はほぼ同じ。
あっさりと買い物を終えてキッチンカーの脇まで来ると、夏羽が俺達を待っていた。
「もう終わったのか?」
「今日はもう帰っていいって」
「悪いな、邪魔しちゃった感じ?」
「そういう訳じゃないから…大丈夫」
長袖の白いTシャツにジーンズ。
見かけは子供の時と同じ服装なのに、随分と大人びた雰囲気に見えた。
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