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第119話

「初めてで緊張した!」 やや興奮気味に今日の即席料理教室の感想を夏羽が言った。 「あんまり家では作らないか」 「台所汚れるしね」 今日はアジフライと筍ご飯、アサリの味噌汁とグリーンサラダ。 優羽は医者という職業柄包丁は握らないだろうし、なかなか男の子が料理をする経験もないだろう。 だから思い切って夏羽に鯵を捌いてもらった。 魚が怖いとか苦手とかはなかったようだが生の魚に包丁をあてた経験は無いようで、おっかなびっくりな様子で包丁を握っていた。 「骨にたくさん身が残っちゃったから僕のアジフライ痩せてる…」 「夏羽は上手な方だよ。なあ、郁弥」 フライにソースをかけた涼真はそのプラスチック容器を俺に渡した。 「そうそう、涼真は粉々だった。ほら、夏羽」 俺はソースをたっぷりとかけ、箸でフライをつつく夏羽に渡した。 「粉々になんてならないでしょ?」 甘いな。 涼真の実力知らないから。 「なるんだなー。あれ、結局鯵のなめろうにしたんだ」 「あれはあれで美味かった。結果オーライ」 食事をしながら涼真の武勇伝とも言える過去の勇姿を事細かに晒し、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。 食後のコーヒーをリビングで飲み終えると涼真がいそいそと席を立った。 「俺台所片付けるからさ、二人でゆっくりしててよ」 「ありがとう、涼真」 「あの、僕やりますよ」 席を立とうとする夏羽を涼真が止めた。 「たまにはゆっくり話でもしなよ…叔父さんと」 …叔父さんは余計だって。 二人で並んでソファーに座っているが食事中とは打って変わって夏羽は口を閉ざしてしまった。 夏羽はコーヒーに注いだミルクをスプーンでずっとかき混ぜていた。

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