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第121話

「……ッ…」 もちろんいつまでも隠し通せる事では無くて、何時か…聞かれるんじゃないかと…ずっと思ってた。 ただ、…それを聞いてくるのは真咲なんじゃないかって…そうも思っていた。 「…どうしてそう思うの?」 努めて平静に聞き返す。 「…真咲のお父さんと…仲がいいから…」 どこまで気づいているか分からないけど…やっぱり分かってしまうのか。 「涼真とは幼馴染みで付き合いも長くて…あ、そういう付き合いが長いって意味じゃなくて…」 誤魔化してしまおうか…それとも…。 「俺は…自分の恋愛対象は女性だって思ってたし、男が好きな訳でもない」 「…うん…」 「…でもね、涼真は…特別なんだ」 「……」 「涼真を助けてやりたい。笑顔を見ていたい…」 …辛そうな顔は…見たくないんだ… 「…そう、強く思うんだ」 夏羽はじっと俺を見つめていた。 「…そうなんだ…」 そう言って視線を外し、子供らしからぬ憂いを含んだ視線を床に落とす。 …まさか…夏羽… 親でもない俺が子供にこんな事を聞いてもいいのだろうか。 「…夏羽は…男の子が好き…なの?」 そう問うと夏羽の瞳が揺れた。 「…わからない…」 ああ。 この子はこんなに早くから自分の内面と向き合っているのか。 右手を伸ばして、そっと夏羽の頭に触れた。 ポンポンと小さな子供にするようにあやして、細い肩を抱き寄せる。 「今すぐに答えを出す必要はないんだ。ゆっくりと大人になるまで考えて…」 ふと、俺に視線を寄越す夏羽。 「…大人になっても考え続けてもいいんだ…」

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