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第122話
それからしばらくは二人とも黙りとしてしまって、若干の気まづい雰囲気の中に片付けを終えた涼真がリビングにやって来た。
「話は出来た?」
「…ん…、まあ…」
俺が夏羽の肩に腕を回しているのを見て涼真は何かを悟ったようで、俺に向かって軽く頷いた。
「夏羽くん、僕はね…」
涼真は柔らかく笑い 俺のすぐ脇、ソファーの肘置きに浅く腰掛けて夏羽に話しかけた。
「…僕は今とても幸せなんだ」
「……」
「真咲がいて、郁弥がいて…そして夏羽くんや、夏羽くんの兄弟にご両親…たくさんの人と関わって暮らしている。僕一人じゃ…とてもこうは出来なかった」
そう言って涼真は俺を見た。
「郁弥が、…僕を助けてくれたから…だから…今、こんなに幸せでいられるんだ」
ゆっくりとひと言づつ確認するように話す涼真。
「りょ…涼真さんは…叔父さんの事…」
「うん、大好きだよ」
「…それは……」
夏羽は目を逸らし、言い淀む。
「……許される事、なんでしょうか…」
「夏羽!」
「待って、郁弥。…夏羽くん…」
涼真は俺から離れてソファーに座る夏羽の目の前に跪いた。
「…誰に許しを求めて…誰に許されるの?」
「…そ…それは…」
「僕は…ただ…好きな人達の中で…静かに生きていきたい…それだけなんだよ…」
「……」
「僕の事を…許せない、と思うならそれでも構わない。姿も見せないようにする。だけど…」
穏やかだけど、強い意志を持った涼真の瞳。
「郁弥と真咲を…拒絶しないで欲しい」
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