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第123話

「…すみません…でした…」 涼真の言葉が夏羽の必要としていたそれなのかは分からない。 だが夏羽はあからさまに項垂れてしまった。 「…酷い事言いました。そんな言葉を言わせたかった訳じゃなかったのに…」 「いいんだよ、分からない事は何だって僕に聞いて」 しばらく俯いて唇を噛んでいた夏羽が視線を上げて俺を見た。 「とと…僕ね…好きになった子…男の子なんだ…。でも…」 言葉が途切れ、また俯く。 「…でも…でもね…」 目は何かを訴えるように俺を見つめるのに…その次の言葉が出てこない。 「いいよ、焦らなくて。今はまだ言わなくてもいいんじゃないのか?」 そう言うとふるふると頭を振った。 「本当は…ぼ…くは…僕は…りょう…まさんに…あんな事…言う資格な…んて…無い…」 目を見開き瞳いっぱいに涙を溜めて、顔を歪ませる。 「何がお前をそんな風に苦しめるんだ?」 「だっ…て…あぁ…」 涙が一筋零れて頬を伝い夏羽の胸を濡らす。 「夏羽…」 「ふっ…う…ぅあああぁぁ……」 その涙が次の涙の呼び水になったように…夏羽は初めて俺の前で大泣きした。 泣いて泣いて、泣いて…。 小さな子供のように泣き疲れて…夏羽は眠ってしまった。 いつからその小さな胸を痛めていたのだろう。 ただ見守る事しか出来ない俺は夏羽の為に何が出来るだろう。 俺の腕の中で眠る夏羽。 その幼い顔に残る涙の跡を指で拭き取った。

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