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第125話
三人で朝食を取り、夏羽は『お世話になりました』なんて大人ぶった言葉を残して帰って行った。
使った食器類を洗っていると涼真が後ろから肩に顎を乗せてきた。
「夏羽くん、大人になったね」
「ん?まだまだ子供だよ」
「ふふ…」
人生の中、子供でいられる時間は短い。
子供のうちは大人のような制約の無い世界で伸び伸びと過ごして欲しかった。
『…僕ね…好きになった子…男の子なんだ…』
人を好きになるのはいい…と思う。
でも好きな子の話はあんな苦しげな顔でなく、笑顔で言って欲しかった。
もちろん…全てが上手くいく訳じゃないのはわかっているけれど…。
「好きな子…かぁ…」
紆余曲折を経て、まとまるか、まとまらないか…。
結果は最後まで分からない。
「夏羽くんの好きな子って…きっと…素敵な子だよ」
「…そうだよな」
あの子の周りが全て敵になってしまっても…俺は…
「…味方でいたい…。ん?」
後ろから涼真が俺を抱きしめた。
すりすりと首筋に頬を擦り付け、温かな体温が直に伝わってくる。
「コーヒー淹れようか」
「うん…ありがと」
…こんな風に、日常が穏やかに過ぎていけばいいのに…。
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