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第133話

真咲と作ったチャーハンは美味しかったけれど何だか喉を通らなくって、胸がいっぱいのまま食事を終えた。 「ととは…僕に話せる事はあるの?」 真咲はさっきの話の続きをしたいのだろう。 「そうだね…俺は真咲を育てる涼真をサポートしてきて、涼真も真咲も一生懸命に生きてきたって思うだけだよ」 「ふうん…」 真咲はいつもと変わらないように見える。 でも張り裂けそうなその胸の内でいろいろ考えてきたんだろう。 「事実を知りたいの?」 「…うん」 「悪い事ではないよ。でもね、たった一枚の紙切れに書いてあるような事実だけじゃないって事、忘れないでいてね」 「……」 真咲がどこまで理解してくれるのか…涼真との関係を改めてどう思うのか…悩ましい…。 「ご馳走様でした」 「ご馳走様、美味かった」 「ととが教えてくれたから」 そう…俺が、教えた。 親でも、兄弟でも、親戚でもない…俺が。 数の概念も化学変化も料理を通して教えてきたんだ。 真咲は家庭料理ならもう失敗することはほとんどない。 俺は使って欲しい食材を指示しただけ。 子供だからなのか器用なのか…飲み込みも早いし家事のセンスもいい。 「さ、片すか。終わったら一緒に買い物に行かないか?」 「いいよ」 「後で声かけるから」 「分かった」 椅子から立ち上がってリビングを出ていく背中を、俺はじっと見ていた。

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