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第136話

「涼真…。俺、…寝てた?」 「ぐーぐーと、そりゃ気持ちよさげにな…」 「マジか…」 いつの間に真咲との話を終えたのか、涼真はソファーの背もたれに手を置き俺を見下ろしていた。 室内灯を背にしているせいかその表情は暗く見える。 …なんだよ、寝落ちするなんて!俺! 緊張して眠れなかったはずなのに! 「…ウソ」 「え?」 「ホントは眉間に皺寄せてウンウン唸ってた」 角度が変わって見えたのは、少し困り顔になっている涼真。 「…夢のせいだ」 「夢…見てたの?」 「咲百合の…夢」 「……そう」 急に立ち上がり、俺に背を向ける。 「真咲に…話した」 「……」 「最初っから最後まで」 「…そう…」 小柄な背中が一段と小さく見える。 無意識に近寄って…抱き締めた。 「頑張ったな、涼真」 「…」 「真咲だって…分かってくれる」 「……」 回した手の甲に温かな水が落ち、表情は見えないが涼真が泣いているのが分かった。 「疲れたろ?もう休もう」 室内灯を落とした暗い中、涼真の肩を抱いて寝室に送った。 楽しくても、悲しくても、辛くても…朝はやってくる。 外が明るくなり始めた頃、俺はたいして眠れぬままベッドを出た。 本棚から取り出した数冊の分厚いアルバムを持ってリビングのソファーに腰を下ろした。 一緒に暮らしだしてからの写真。 だから真咲が産まれたての赤ちゃんだった頃の物は無いんだ。 表紙を捲れば涼真と真咲の笑顔。 これは、真咲が熱を出して初めてウチに泊まった日の朝、俺がこっそり二人を撮った写真。

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