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第141話
「郁弥…苦し…」
強い力で身動ぎも出来ないように、キツく抱きしめたせいで涼真がもがいてバランスを失い、二人共勢いよくベッドにゴロンと転がった。
「痛てーだろ」
手の甲で俺の額をコツンと叩く。
「はは、ゴメン」
「ふ…はは…」
目が合った涼真は急に顔をくしゃくしゃにして声を上げて笑いだした。
「あははは…は…」
「…涼真…」
寝返りを打って俺に背中を向けたのはきっと顔を見られたくないからだ。
…本当は笑ってるんじゃない…。
「…はは…はッ…ふッ…うぅ…」
ほら、声が湿って涙混じりになってる。
「涼真…」
震える背中を、俺は抱き締めるしか…出来なかった。
「っ…う…ぐすッ…も…大丈夫…」
短い時間静かに泣いてから、身体に絡ませた俺の腕をギュッと掴んだ。
「俺…こんなに泣き虫じゃなかったのに…。真咲の事になるとダメなんだ。あの子がいないと…多分生きていけない…」
「うん…」
「そんなんじゃダメだって、俺を怒ってくれよ!いつまでも甘えるなって言ってくれよ!」
「…言わない」
「何でだよ…こんな俺、最低だって…自分の為に他人の子供引き取って…自己満足だ…」
「そんな事ない。誰にでも出来ることじゃないの分かってる」
「でも…そのせいで真咲は傷ついて…俺に迷惑かけられないって…せめて勉強だけは自分の力で何とかなるからって…」
…ああ、だから真咲は涼真に気をつかって金銭的にも負担のかからない公立の学校を志望したのか。
そう悟らせないように偏差値の高い学校を受験して。
俺は胸の奥が苦しくなって涼真の背中に額を押し付けた。
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