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第142話

「本当に…俺の大切な家族なんだ…。将来事実を知って傷つけるかもって分かってても…一緒に暮らしたかったんだ」 真咲も涼真も辛い思いをしている。 でもこれまでの幸せな時間があるから、きっと時間がかかっても二人の心は癒えるだろう。 「涼真は間違ってない…大丈夫、な。俺に身を預けて」 「…郁弥…」 服の上から頬ずりする。 …愛しい… …優しくて、強い涼真。 「ちょっと郁弥…ぁ、ン」 涼真の細い腰骨を、掴んでしまいそれに敏感に反応された。 肩越しに俺と目が合う。 泣いたせいで赤くなった目元に不安げな顔。 …ダメ… 放っとけない。 「今だけ。少しでも…忘れさせてあげる」 ベッドに横たわる涼真の身体にのしかかり、顎を掬った。 至近距離で瞳の奥を覗き込めば悲しみに染まった心は隠せない。 俺は黙って唇を涼真のそれに押し当てた。 唇を柔く食むとゆっくり瞼が閉じて、俺は許されたのだ…と思った。 片手で髪をまぜながら口腔内はただ優しく舌で辿る。 「…もっと…強く…して…」 息継ぎの合間の一言が俺を求めてくれるから嬉しくって…頼ってもらえてるって背中がゾクゾクした。 「優しくするから…俺の腕の中で…泣いて?」 涼真は少しビックリしたようだったけど、応えるように目を閉じた。

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