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第154話
「真咲、飯にしよう」
夕飯の準備も出来て俺は真咲を呼びに恐る恐る部屋に入った。
学生鞄はベッドの足元に置かれ、濡れた制服はハンガーに吊るしてある。
ベッドは人型に膨らみがあって、きっと部屋の主が横たわっているのだろう。
「真咲、そろそろ出ておいで」
ベッドの端に腰を掛けて薄い掛け布団を捲った。
あどけない顔が布団の中でその目を開く。
「…ん?少し顔が赤いな…。熱は…そこまでじゃないか」
いつもの習慣で両手で真咲の顔を覆い、小さな子にするように体温を調べた。
雨に濡れたせいか真咲は少し熱を帯びているように感じた。
「飯、食えるか?」
「…うん」
「無理はするなよ。食えるだけ、な」
ゆっくりと起き上がった真咲を連れて涼真の待つリビングへ。
いつものように三人揃って食事を始めた。
「いただきます!今日はめっちゃ手が込んで綺麗」
俺が気合いを入れて飾り付けた海鮮丼。
「そーだろ?海鮮を散らしてサーモンの切り身は花の形に巻いたからな」
どやぁ〜とキメても真咲の反応は薄い。
何か考え事でもしているのか、それとも体調が今ひとつなのか。
「どう、真咲?」
「いただきます。うん、美味しいよ」
その言葉はどことなく表面的で、真咲の心ここに在らずといった風だ。
海鮮丼の上っ面を剥がすように箸を付けている真咲は、やはり普段とは違う。
「キュウリが葉っぱかぁ、よく出来てんな」
「それっぽく見えたら大成功だ」
いつもと違う真咲の様子に涼真も気がついたんだろう。
真咲を気にしつつチラッと俺に視線をよこし、場を明るくしようとしてくれている。
「…あのね…」
「うん…?」
「まだ…僕に話してない事があるんじゃないかな…」
無意識に涼真と目が合う。
心臓に杭を打たれたような、それくらいの衝撃だった。
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