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第160話
「真咲!」
体がグラッと揺れて、力なく崩れていく…。
一瞬の出来事だった。
だが、今まで見たことないスピードで涼真が動いて膝から崩れるように沈んでいく真咲を腕に抱えた。
涼真は自分の体を真咲とタイミングを合わせるように下げ、床に膝をぶつけるのと引き換えに真咲が倒れるのを防いだ。
「身体が熱い…熱がある」
「夕立に降られたたからだ」
あの時、真咲の体はびしょ濡れだった。
俺と出会った時には雨は止んでいたから きっと濡れた体のままでどこかにいたに違いない。
「ベッドに寝かそう」
「待って、涼真。それなら…」
俺は涼真に囁いて、涼真は頷いた。
「ん…はぁ…」
「真咲、終わりよ。身体が冷えたせいかしらね」
捲っていたシャツを元通りに直し、優羽はにっこり微笑んだ。
「疲れてるみたいだし、ゆっくり休ませてあげて。子供なんだからすぐに元気になるわ」
「いつもすみません」
「ありがと姉ちゃん」
診療時間外にもかかわらず、身内の特権を活かして優羽に診察しに来てもらった。
「あんまり無理させるんじゃないわよ」
玄関先で声のトーンを落とし優羽が俺に忠告した。
「…うん」
「色々あると思うけど…焦っちゃダメだからね」
「姉ちゃん…知って…?」
靴を履き重そうな診察鞄を抱えて優羽はウインクをして見せた。
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