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第161話

夜、いつもならまだテレビを見たり語らいだりしているような時間…。 そんな時間に布団に入っている。 まるで子供みたいだ。 すぐ隣りには真咲。 その向こうには涼真。 荒かった真咲の呼吸は落ち着いており、具合が良くなってきたようだ。 「不思議だな」 「…ん?」 「あんなに小さかったのにって」 「あぁ、大きくなった」 涼真が嬉しそうな声を出す。 敷布団二枚で充分だった。 文字通りの川の字。 あれから十数年経ち、こんなにスクスクと成長した。 優しくて、素直で、勤勉で…そして大人びた。 「何だか寂しい」 「そう言ってもね…こればっかりは…」 …なるようにしかならない… 涼真が俺に…というより自分に言い聞かすように呟く。 「…そうだな…」 リモコンを手にして照明の明るさを落とし、俺は目を閉じた。 翌日、目覚めると大きな瞳がこちらを見ていた。 「…おはよう。具合はどう?」 「とと、おはよう。具合?よく寝眠れたみたいで気分はいいよ」 顔色も声も普段通りに戻ってる。 額に手を伸ばして、頬から首筋の体温を計った。 若干温かい気もするが、それほどの熱は残ってない。 「そっか良かった」 「…?久しぶりだよね、一緒に寝るの」 「嬉しいだろ?」 「小さい頃に戻ったみたいで…懐かしかった」 「そっか」 …懐かしい…。 …そうだな… 俺も…そう思った。

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