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第168話
「おはようございます」
「ナツ、おはよう。お父さん、とと、行ってきます」
「え?い…いってらっしゃい…」
するっと俺の脇をすり抜けて、真咲は夏羽と行ってしまった。
バタンと閉じたドアが俺達を取り残して。
「…知ってた?」
「いや…知らない」
涼真がバタバタと廊下を走り、部屋からレバー式ファイルを持ってきた。
合宿のお知らせを二人で顔を近づけて読み、納得出来る答えを探す。
「え?あ、そーいう…」
「合宿って一年生だけじゃないの?」
「ココ、ほら」
「あ〜…」
『合宿初日と二日目は一部上級生も参加し、円滑な学園生活を始められるようにサポートいたします』
「コレだ…」
「ビックリしたよ」
「俺も」
何だ、心配要らなかったじゃん。
初日は夏羽が付いている。
あとは…どうにかなるだろう。
四泊五日、真咲はどんな風に同級生達と過ごすのだろう。
「真咲、楽しく過ごせるといいな」
「大丈夫だよ」
「そうだな」
顔を近づけたままでいた涼真が、俺の頬に鼻先でスリッと撫でた。
「…朝っぱらから…誘ってる?」
「まさか!夜までお預け」
「くっ…!」
可愛いく俺を誘って、涼真は室内に戻っていった。
「今日から涼真と二人か」
もちろん真咲がいるのが当たり前なんだけど…涼真と二人っきりがまだまだ新鮮で、しかも夜はちょっと期待出来る…。
自分でも顔がニヤけていくのが分かるのがキモイ!
「ほら、涼真!いつまでそこにいるんだ?」
「あ、今行く!」
伸びを一つして、俺は涼真のいるリビングに向かった。
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