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第170話

「涼真、ただいま〜!」 玄関を入るなり大きな声を出せば奥から涼真が笑いながらやって来た。 「おかえり、郁哉。そこまで声を張らなくても聞こえるよ」 「悪い、遅くなった」 「仕事なんだからしょうがないだろ?」 さりげなくカバンを持って俺の部屋へ。 入ってすぐに俺は後ろから涼真のシャツを引っ張った。 「ん?どした?」 「……」 ちょっとだけ口をへの字にして頭を傾げてみせる。 「んー…もしかしておかえりのチュウ?」 よし!正解! 俺はそのまま唇を突き出してキス待ち顔をして見せる。 「もう…」 小さくそう呟いてから涼真が俺にキスをした。 そっと唇を押し付けて…角度を変えて何度も触れる。 …んん? 物足りないんですけど?? 涼真の背中に腕を回し、その身体を引き寄せるように抱き締めた。 「あ、郁哉…ちょっ……」 言い終わる前に涼真の口を塞ぎ、言葉を吸い込む。 待ちきれずに舌先でノックすれば簡単に唇も歯列も開き、俺の侵入を許した。 「足んない…から…」 息継ぎの合間にそう言うと背中に手のひらの感触がして、クイッとシャツをズボンから引き出し直に肌に触れてきた。 涼真の手のひらの体温に身体が震える。 「せっかち…。足りないのは…俺も一緒」 途切れ途切れに言われて、体が熱くなりじんわりと汗が滲んだ。

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