178 / 322
第178話
「お茶ありがとうね。……うん」
「何かご不満でも?」
「ないよ…」
そう言って、俺に背を向けてずず…とお茶を啜る佐藤リーダー。
ちゃんと淹れたから不味いって事はないと思う。
鬱陶しいから窓の外なんか見て、ため息とか出さないでくれ。
「終わったー…」
「印刷する時間無駄だからデータ送って」
「今送ります。…はい、飛ばしました。確認お願いします」
よしッ!終わった!
時間はまだ五時を過ぎた所、やり直しが出ても残業無しで帰れる!
昨日は終電に近い時間に退勤して、俺が疲れてるだろうからって独り寝させられて…
…余計に寝られなかった。
今日は涼真と一緒に眠りにつきたい…!
「香束、オッケーなんだけど表三のグラフ追加しといて」
「わ、分かりました」
「…そんな焦んなくても今日は帰してあげるよ」
「……え…」
ドキッ。
「あ…ありがとうございます…」
はしゃいでた?俺?
ウキウキがどこからかはみ出してた?
朝はどよんとしていたのに、今は俺が送ったデータをニヤついた顔でチェックする佐藤リーダー。
何だよ、佐藤さんだって嬉しそうじゃん。
俺と二人きりで今一つ元気が無かったのに。
…ん?
中野さんの研修指導は今日まで。
中野さんが居なかったから元気がなかったのかな?
…まさか…ね。
そして追加のグラフを三つ(増えた)作成し、今日の業務は終了。
よし!今日は残業無しで帰れる!
終業を知らせるチャイムを合図に、俺はダッシュで会社を出た。
ともだちにシェアしよう!