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第188話
周囲の当たりはやや強めだったが負けじと定時退社をキメ、俺はいつものスーパーに向かった。
中野さんと飲むから来ないかと佐藤リーダーに誘われたが次回誘って下さい…と断った。
内心ちょっと行ってみたかったけど、今日は家族優先!
「へへっ、なんか照れるな」
一人ニヤニヤしながら電車に乗り最寄り駅まで帰り着いた。
週末の五十日のせいか幹線道路の交通量はいつもより多く、そしてにわかに降り出した雨が地面を濡らす。
「うわー…降ってきちゃったよ」
午前中は晴れていたはずなのに、午後になって空一面が雲に覆われみるみるその厚みを増していったのは知っている。
「洗濯物…大丈夫かな」
軒下があるからベランダに干していても風が無ければそうそう濡れる事はないが…早く帰って取り込んでおかないと。
それから俺の部屋に昨日使ったローションが出しっぱなしになってるかも。
帰って仕舞わないと…万が一真咲に見つかったら気まづいどころじゃないよな?
とにかく、俺は焦っていた。
目の前の信号がもうすぐ変わると分かっていても足を踏み出し渡り始めてしまった。
雨はまだ降り出したばかりで傘をさしていなかった俺。
サラリーマンのスーツなんてどれも暗い色ばっかりだし道路は渋滞気味。
イライラしてるドライバーだらけだろう。
ストライプの上に一歩二歩足を踏み出し、やけに明るい光が視界の端から広がって来た…と思った瞬間に…
もう…そこで目の前が真っ黒になって、俺は世界から遮断された…ような気がした。
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