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第192話

整形外科の他に精神科、神経内科など普段縁もないような診療科のお世話になったが今は何もする事がないようで入院してから一週間、無事退院の運びとなった。 「悪いな、わざわざ仕事休んで付き添ってもらって」 俺は松葉杖をつき、外から見えはしないが身体中に湿布が貼ってある。 痛々しいと言えばそうだが自分で思っていたよりは元気だ。 「いいんだよ、助け合いだから。それよりもう退院して大丈夫なのか?」 「ん?ああ。する事もないし退屈だから出られて嬉しいよ」 「とにかく、無理はするなよ郁弥」 「ああ」 病院のロータリーで迎車と表示されたタクシーに手を振り二人で乗り込む。 家まではほんの五〜六分。 短いドライブだ。 午前の回診後に診察室に呼ばれ退院の許可が降り、手続きやらなんやらでマンションに着いた頃には午後になっていた。 一階で開業している姉に姿を見せ無事をアピールしてからエレベーターに乗り自宅に帰り着いた。 「あ〜やっぱり家が一番」 「お帰り、郁弥」 「あ、あぁ。…えーと…」 「涼真、…って呼べよ」 「りょ…うま…」 たどたどしく名前をよんでみるが…涼真はただ微笑んで俺を見ていた。 「なんだろ…照れる」 「慣れるよ」 「そ…だな」 涼真はダイニングで寛ぐ俺にアイスコーヒーを差し出し、カバンの中の洗濯物を仕分け始めた。 「い…いいよ。オレが後でやるから!」 「遠慮すんなよ」 「悪いって!」 慌てて立ち上がるとギプスの足が床にゴツンと当たり鈍く痛む。 「いてッ!」 そのままぐらりと俺の身体が涼真に向かって傾いていった。

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