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第193話
「あっ…!」
「いッ…!」
体が不格好に倒れた。
「大丈夫か?…あッ…っっ…!」
「俺は平気。郁弥こそ…」
俺は太っている訳ではないが上背がある分自重もかなりある。
この体で華奢な涼真を下敷きにしたら…怪我は免れない。
痛む腕の事も忘れて必死で床に手をついた。
「あああ〜痛ってぇ〜…」
「ほら…何やってんだよ」
「えっ?」
見事なまでの床ドン。
…からの…
…抱きしめられた…。
「あ…だ…大丈夫、大丈夫だしさ…その…」
「もう!心配させんなよ…」
すり…と背中を撫で抱きしめる腕が、あまりにも優しくて…勘違いしそうになる。
「電話がきた時…心臓が止まるかと思った…」
「涼真…泣いて…」
…泣いてる…?
俺を心配して…?
ドキッと胸が鳴る。
本当に、本当に小さく震える涼真。
「か…体どかすから…腕緩め…」
「バカ…!ちょっとだけ…こうさせろよ…」
「あ…うん…」
腕は緩むことなくむしろさっきよりも強く回され、俺は戸惑った。
距離感の近い人なのかな…。
…まさか…な。
「悪かったな」
一分程過ぎて涼真は俺を解放した。
「いや、俺が倒れたから…。怪我は?」
「無いよ。痛い腕で庇ってくれたんだろ?」
そう言って笑う涼真。
幼なじみって言ってたけど、君は一体何者なんだ。
――
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