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第194話

「とと、僕の事思い出した?」 「……ゴメン…」 「真咲、そんなにすぐには無理だよ」 三人で囲む食卓…俺と涼真と真咲。 不自由だろうからと涼真が夕食を用意してくれた。 牛肉とレタスのチャーハンと春雨スープ。 俺の好物だ。 改めて二人の顔を見比べて思う。 なぜここで一緒に暮らしてんだろう。 よく覚えてはないけど物の仕舞ってある場所は何となく分かるからここに住んでいたのは間違いない。 女性の気配がないからお互い結婚もしてないみたいだ。 「そんなに見るなよ。照れるだろ?」 「ゴメン!いや、違くて…その…えーと…」 何か、何か話… 「お…俺たち何で一緒に暮らしてんだ?」 「…それは…小さな子供がいると大変だろって郁弥が俺たちを拾ってくれたんだ」 「僕、お母さんいないし…」 「そ、そうか。分かった!ゴメンな変な事聞いて…」 さらに気まづい雰囲気になり食事も喉を通らない。 「食欲無い?それとも不味かった?」 「いや、美味いよ。料理出来るんだな」 何気なく言ったのに、涼真の動きが止まった。 「家事オンチだった俺に教えてくれたの…郁弥だよ」 「俺?」 …と聞けば二人とも無言で頷く。 俺か? うーん…覚えてねぇ。 「まだ体が戻ってないんだし無理して食べなくてもいいんじゃない?風呂にでも入ってくれば?」 「ああ、悪いな。そうする」 ちよっと居心地が悪くなってきたからそう言ってもらえて内心助かった。 頭の中に霞がかかっているみたいにぼんやりする。 着替えを取りに自室に入ってベッドにボスンと倒れた。 「あースッキリしない…ん?」 仰向けでバンザイをした手が硬い物に触れた。 それを手に取って、俺は…目がテンに…なった。

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