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第195話

透明なボトルにピンク色で縁どったハートマークがわんさか…。 思わず声に出してラベルを読んだ。 「らぶろーしょん……」 これは…その…アレか? 反対側の注意書きにも目を通す。 「本品はアナル用となっており……あ…あなる…?」 ん? フツーは違うよな…。 いや…そもそも前戯をちゃんとすれば無くても大丈夫だろ…。 「まさか…!いやいやいや…」 大きく頭を振ってもう一度ボトルを見る。 何で?俺…そっち? 必死に考えようとしても何も思い出せない。 「これ…どうしよう…。…とりあえず仕舞っとこ」 誰かに見つかったらとんでもない事になる。 そう思い焦って手近な引き出しの中によく見もせずにグイグイと押し込んでおいた。 「さ…風呂フロ…」 パンツと着替えを引っ掴んで俺はバスルームへと向かった。 健康な時は気にならない事も、自分がそうじゃなくなった瞬間に思い知らされる。 ここ数日の駅までの道のり、改札口、ホームに行くための階段…。 地獄か。 慣れない松葉杖でえっちらおっちらと進む俺を周囲は舌打ちをして通り過ぎる。 「世知辛いよなぁ…」 だいぶ余裕を持って家を出たが…正直しんどい。 「もう、やんなっちゃう…」 退院して三日自宅療養をし、あと一週間休んでいいと言われていたが家にいても暇だし “ 大丈夫です”と高を括って出勤してこのザマだ。 数日間の涼真の付き添いがこうもありがたかったとは。 「考えてもしょうがないよな」 止めていた歩みを再開した途端、誰かにぶつかった。 しかもぶつかった勢いで痛みのある肩をホームの柱に命中させてしまった。

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