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第197話

基本座り仕事な為、午前中の業務は何の障害もなく終了。 食堂で松葉杖をつきながらトレーを持ち、今日の昼飯を吟味する。 あんまり動けないからうどんがいいのか。 それとも普段使わない筋肉使ってそうだから肉がいいのか…? 「よっ、モテ男」 「中黒」 「今日はトンカツスペシャル、だろ?モテ記念日」 うっせ。 こっちはうどんにするか唐揚げにするかで悩んでんだ。 「んだよ…くだらない事言ってんな」 「朝っぱらから見せつけてくれちゃって〜」 見られてたのかよ。 「あの子、すっげーいい子なんだぜ?可愛いし。弄ぶ事だけはするなよ」 「する訳ねぇし」 あ、こいつあの子と同じ業務運営統括…だったわ。 「もしかして中黒、…お前狙ってた?」 「妹みたいに可愛がってるだけ」 「…妹…」 一回り以上離れていそうだし年齢的には姪っ子でもおかしくないな…。 「若い子はいいぞ」 「はぁ?」 「付き合っちゃえば?」 「しねぇし」 「何で?」 「何でって…」 …何でだ? …理由…? …無いな。 いやいやいや、付き合ってって言われた訳じゃねえし。 うん、勝手な思い込みはしちゃいけない。 場所を忘れ、一人脳内でツッコミをする。 「ほら、トンカツスペシャル」 「え?」 俺のトレーにはいつの間にかトンカツとデザートの杏仁豆腐がのっていた。

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