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第198話
土曜日、診察を終えた俺は家で涼真と昼飯を食っていた。
チルドのピザとグリーンサラダ。
もうずっと涼真と真咲が家事をしてくれている。
打撲はもう治り、ヒビの入った足もさすがに三週間経過して痛みも引いてきた。
「来週ギプス外すんだって」
「お、とうとう脱皮か!」
「脱皮…ま、似たようなモンか」
煩わしいこの石膏…重いし痒いし汚れてきてるし。
「そうだ、野原さんにも何かお礼した方がいいよな?」
何と、あの日から毎日のように俺に付き添って出勤してくれてるのだ。
「そりゃそうだろ」
「何が…いいんだろう…」
「食事にでも連れてってあげれば喜ぶんじゃないの?」
「食事…なるほど」
ピザを食べ終え自室に戻り、パソコンで検索をかけると…うわ、店が多すぎて選べない…。
「どんな所がいいんだか…わからねぇ…」
基本男同士でしか外食に行かないからな。
…ん?
女の子とデートした事も確かあったよな?
「ん……」
思い出したい事にはモヤがかかったようになり、上手く記憶が辿れない。
「そうだ!行きたいところを聞けばいいんだ!」
俺はスマホを手に取り早速メッセージを送った。
一週間後、俺はギプスが取れた足で待ち合わせの場所に出かけた。
「あ!香束さーーん!」
まだ待ち合わせ時間の十分前なのに俺の姿を見つけてぴょんぴょんと跳ねる茶色い頭。
ふんわりとした膝丈のワンピースは細いピンク色のストライプ柄で裾には大柄のレースが二重になっている。
「少女漫画か」
…イカン…思わず口に出た。
「…こんにちは!…どうかしましたか?」
「いや…何でも…とりあえず映画館に行こうか」
「はいッ!」
俺の後をピョコピョコと付いてくる様子は何とも可愛らしく、久々にギプスの外れた足で軽やかに歩き出した。
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