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第202話

「…ただいま」 「お帰り、郁弥」 リビングにいた涼真は俺を見るなりスプーンを差し出した。 「真咲にはナイショにして!」 手にアイスのカップを持っているからきっとこっそりと食べていたんだろう。 こんな夜遅くに食べて、虫歯になるぞ。 「しょうがねぇなあ。ワイロもらってやる」 あ〜ん、と口を大きく開けて親鳥から餌をもらう雛のようにアイスを口に入れてもらった。 「美味っ!鼻から抜ける抹茶の香りがすっっごくイイ!」 「だろ?郁弥の帰りが待ちきれなくて味見したくなるの、分かるだろ?」 …そっか、待っててくれたのか。 時刻はあと一時間もしないで日付が変わる夜遅い時間。 彼女の部屋を出たのは二時間前で俺は家に帰るまでの時間、喫茶店にいた。 心を落ち着ける為に。 それは洋服を脱ぎ出した彼女にびっくりした…というのもあるが、もっと別のモノに驚いたから。 彼女のあの下着姿…白い肌の上に纏う黒いレース…を見て、あろう事か…俺は…そこに涼真の姿を重ねた。 どうして? 涼真は男なのに! 一部の女性が身につけるような…しかもエロいヤツ…そんな下着を着けるはず無いのに。 デジャブのように彼女と涼真が重なって見え、俺は彼女の誘惑を振り払って部屋を飛び出した。 夜の街をうろうろと歩き、目に入った喫茶店で頭を冷して…ようやく家に帰って来たんだ。

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