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第203話
「父さん、ずるい」
「だって…食べたかったんだモン…」
「…僕だって」
朝から涼真と真咲がささやかな言い合いをしている。
原因は涼真が昨晩食べたアイスについて…。
ちゃんと捨てずに台所に放置していたのを真咲が目ざとく見つけてしまったのだ。
「僕が食べようって言った時はととがいる時にって言ったのに」
「…ゴメン…」
あー…何か俺が原因?的な?
いやぁ、申し訳ない。
「俺、今日アイス買ってくるからさ、もういいんじゃない?」
「そーゆー事でもないんだけど…ととがそう言うならもう言わないよ」
「真咲!」
ニコリと真咲が笑って、そんな真咲を見て涼真が半分呆れ顔をした。
「…現金…」
「いいじゃないか、子供なんだしさ」
「…まあ、な。うん、そうだよな」
二人がまるで本物の親子のように言い合う姿は俺からすれば微笑ましい。
だって…
……ん?
本物の親子…?
言ってる自分に疑問が湧く。
本物の親子じゃなかったら…何なんだ?
どうして俺はそれを知ってるのだろう?
どうして俺はそれを忘れてしまったのだろう…。
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