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第209話
黒い塊…
…否。
涼真がそれを広げるとまだ昼間だというのにドキンと胸が鳴った。
「それ…」
涼真は唇を若干への字にして顔を赤らめている。
「…分かる?郁弥」
「わ…分かる…。けど…それは現実なの?俺の妄想じゃなくて?」
涼真は自分の体にあて、まるで試着するかのように広げている。
その光景は俺が脳内で勝手に作り上げた幻と、とてもよく似ていた。
涼真の手には女性ものと思しき下着…
…黒い、レースの。
セクシーなそれは肩の細いストラップに丈の短い布地。
黒いフリルに黒いリボンが付いていて、妄想の涼真が身に付けていたものとよく似ていた。
「見たい、着て見せて。そうしたら思い出す…かも。あっ…!」
つい、とんでもない事を言ってしまった!
こんな事言われたら普通は嫌われる!
「あ…、その……違うんだ!」
突き出した手を振り、慌てて否定しようとしてアルバムが手から離れた。
音を立てて落ちるそれを拾い上げ、涼真は俺に向けて真っ直ぐに視線を寄越す。
「うん、…いいよ。見て」
手にしていたそれらをベッドに置き、背を向ける涼真。
シャツの裾を掴み両腕を上げて一気に服を脱ぎ床に散らした。
次いでジーンズのボタンを外し、それも無造作に床に落とす。
ボクサー一枚の涼真は筋肉と薄い皮膚に体を覆われ肩胛骨が艶めかしく突き出し女性とは程遠い体つきをしている。
「…あ…このからだ…」
…知ってる。
…そう、この背中も。
これは俺が妄想の中で見た姿に間違いなかった。
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