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第220話
「処分…。あ、ランドセル…!ずっと納戸に仕舞いっぱなしだよね…どうしよう…」
涼真が思い出したように声に出した。
「いつでも捨てられるからさ、急いで決めなくてもいいんじゃない?」
「あ…うん。…それもそうか」
マイルドに大人な事を言ってみた。
…否でも応でもない。
だが俺の本心は違う。
『もう絶対に使う事なんて無いんだから捨てるか売っちゃうか、とにかく手放してしまえばいいのでは?』
心の奥、深い所で俺がそう宣う。
だって、さぁ…もしも…、もし今さら血縁だって…親戚ですよ…なんて言う人が現れたって真咲が困るだけじゃん。
真咲の父親は涼真だし、俺は他人だけど立ち位置は親戚の伯父さん…それでいいんじゃね?
遺伝子上の繋がりよりも時間的・経済的的な繋がりで充分じゃない?
そうだろ?涼真。
グラスを持ち上げると氷がカランと音を立てて涼し気な音を立てた。
グラスからは結露が垂れてテーブルを汚す。
俺はゴクゴクと勢いよくアイスコーヒーを飲み干し、涼真の顔を見遣る。
涼真はくるくるとグラスを回し踊る氷を見つめて何かを考えているようだ。
…俺を見て。
…俺だけを。
我儘だと思われても、…嫉妬だと思われてもいい。
涼真…俺の事だけ…考えて…。
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