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第221話
「ただいま〜!とと、今日の晩御飯は何?」
「お帰り、真咲。当ててみ?」
「この匂い…カレー!カレーライスだ!」
「ピンポーン!正解!郁弥のカレー美味いよな!」
「もう食べる?僕、お腹ペコペコ」
微笑ましい会話。
だが、俺は一言も喋ってない。
俺が口を挟む隙が無かった…。
いや、親子仲がいい事はいいんだけどね?
美味いカレー食わしてやんよ!
キッチンの床にドンッとデカい荷物を置き、真咲は冷蔵庫から取り出した麦茶をマグカップに注いだ。
それこそゴクゴクと…人体からそんな音がするのか?って位に…大きな音をたてて、プハーッと一息に飲み干した。
すげーな、高校生。
見惚れていたら真咲は何かを思い出したように話し出した。
「あ、さっきそこに知らない人が居たんだけど…家に来た人?」
今日は客なんて来てない。
少なくともここ一時間は。
「他所の家に来た人だろ」
「そっかな…お父さん達より少し若いかな。綺麗な女の人だった」
「ふ〜ん…」
…全くもって心当たりがない。
「勧誘か?」
「どうだろ。ま、放っとけばいいんじゃないの?」
「そうだな…」
相手が誰だか分からないし、真咲が何かされた訳じゃないし。
「嫌だな…」
何でもないと思いながらも俺は内心それが気になっ
た。
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