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第224話
「…でさ、とにかく優秀なのよ」
「うんうん」
「俺なんかが教えるような事、な〜んも、無いの」
「…だろうな」
「おい!だろうなって、何だよ!」
俺だって本当はそこそこ仕事が出来るんだ。
なのに漂う敗北感…。
もうね、一言えば十位察してくれるんよ。
凄く優秀な人、なんだろう。
俺は何かを知っていそうな中黒に苛立ちを隠しきれない。
って言うか、隠さないよ。
時はもう昼飯時で俺は麻婆茄子定食を目の前にして、中黒に今日やってきた山城さんの話をぶちまけていた。
「あ、朝言ってた事ってこれか?でも人事通知出てたかな?」
「よく見ろよ」
「…記憶に無いな…」
麻婆茄子は少し冷めてしまって立ち上る湯気はうっすらとしか見えないがスプーンで一口頬張れば山椒のピリッとした辛さが舌に心地よい刺激を与えた。
「…うーん、…美味い…」
「何だよ、悩んでんのかと思ったら美味いのかよ!」
「中黒も温かいうちに食べろよ」
「言われなくても食べてるわ!」
昼食時に、俺達はそんなくだらない会話をしていた。
「香束さん、お時間よろしいでしょうか」
「あ、ハイ…なんでしょうか」
美人に話しかけられる緊張感…いや、それだけじゃない…。
確実に自分より出来る人に仕事を教えねばならぬ役者不足感…。
うう…辛み。
もうすぐ終業時間。
ここさえ乗り切れば家に帰れる。
俺は涼真と真咲の顔を思い浮かべて笑顔で山城さんに顔を向けた。
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