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第225話
「あの…お話したい事があって。…少しお時間頂けないでしょうか」
「はぁ…。…えっと…休憩室で伺います」
そう答えておきながら内心は“ えー……?”という疑問符でいっぱいだった。
だってさ、俺なんかに聞きたい事ある訳ない。
はッ!
もしかしてダメ出し?
『香束さんのレベルの低さに失望しました』
とか言われちゃう?切なすぎるわ!
「…どうかなさいました?」
「え…!いえ、何でも…」
本当は…何でもなくは…無い。
終業時間をやや過ぎて、俺は会議室にいた。
うぅ、家に早く帰りたい。
飯を食いながら涼真と真咲に癒されたい。
広い会議室の端で、俺は山城さんと隣合うように席に座っていた。
呼び出されはしたものの、彼女は床に視線を落とし口を閉ざしてもう五分経ったろうか。
よく見れば彼女が着ているうす青色のブラウスの下に黒い影。
…違うな…コレ下着だ…。
細かな模様は見えないが彼女もまた黒いレースを身に纏っているようだった。
…イカン、じっと見てたらセクハラ!
彼女には一ミリの興味も無いのだが、どうしても下着に目が向いてしまう。
…涼真が着ると、…本当にイイんだ…。
逃避のように頭に描くのは涼真の…艶かしい姿…。
…はッ!イカン…。
ふるふると頭を振って雑念を振り払うが…
…は〜…ヤダなぁ…。
そして重たい沈黙に耐えきれずに俺は立ち上がった。
「あの…急ぎでないなら…明日でも…その…いいでしょうか…」
「……」
そう言うと不意に顔が上がり、彼女と目が合った。
強い意志を持った瞳。
「香束さん、…あの…!」
「…えッ?」
いきなり…彼女は俺に抱きついてきた。
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