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第226話

「きゃ!」 「え!な、な、何?」 いきなり俺の胸に飛び込んで来た…もとい、俺の胸にタックルして来た。 その勢いで反っくり返り、危うく床に尻もちを着くところだった。 踏ん張ったぜ…俺! だが山城さんは俺の胸にしがみついたまま。 ん?どうした? 彼女の体に触れる訳にもいかず、バンザイの様な情けない格好をしながら顔を覗き込もうと首を無理に下げた。 途端にガツッ、という鈍い音がして目に光が瞬く。 「いッ…!」 体からチカラが抜け、倒れていく…。 ゆっくりと床に近づき…でも本能で身体を捩って横っ腹を床に強か打ち付けた。 頭と腰は守った! 「あの!すみません!大丈夫ですか?」 上から声が降ってくる。 「え…と、まぁ…いてて」 大丈夫な訳あるか! 「あの、…お話したかったんですけど…まだ心の準備が整わなくて…すみません…」 は? 「これで失礼します…」 はぁぁぁぁ? 俺、やられ損? 彼女はそそくさと会議室を出ていった。 「くそ、痛ぇ…」 脇腹がジンジンする。 彼女のとぶつかった顎だって、痛い。 これ、会社で痛めたから労災かな。 でも、理由は…言えない、よな。 …やられ損〜〜! 「クソっ!」 俺は痛む脇腹を手で押さえ、よろよろと会議室を出た。 「あ〜ついてない…」 早く家に帰りたい…。 その一心で痛みを堪え駅に向かう。 そして半泣きでホームに入ってきた電車に乗った。

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