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第227話
「病院に行こうよ」
「…だ…大丈夫…ッ!」
涼真と真咲に早く会いたい一心で家に帰って来たのだが…痛みでろくに動けなくなっていた。
スーツも脱げない状態でリビングのイスに陣取ったまま約十数分…。
うぅ…大丈夫じゃなかった…かも…。
そんな俺を見かねたのか目の前で涼真が何処かに電話を掛けた。
「夜分すみません。整形外科を受診したいのですが…」
「病院…いッ…」
痛い…動いても、喋っても…息をしても、痛い。
痛みは増すばかりで、ワイシャツの下がどうなってるのか正直怖くて見られない。
「ハイ…ありがとうございます。直ぐに行きます」
「りょう…ま…」
「真咲、郁弥病院に連れてくから留守番して」
「はーい。とと、痛そうだもんね」
「…はは…」
テキパキと段取られ、何時でも出れるぞと言わんばかりに涼真は俺をじっと見た。
「よっ…と…いてて…」
うわぁ…立ち上がるのも一苦労。
「歩けるか?」
「…うん」
歯を食いしばって…でも、涼真にはこれ以上心配させたくなくて若干口角を上げてみた。
「掴まって。ちよっとづつ動くよ」
俺の手を自分の細い肩に導き、ゆっくりと…俺の歩みに合わせて歩き出す涼真。
涙が滲んで目の前がぼやける。
「ぐすっ…」
「わ、泣いてる…!すぐに病院に連れてってやるから!」
「とと、頑張って」
「ありがと…」
こんな歳になって泣くしか出来ない自分が…情けなくて、余計に泣けてきてしまった。
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