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第232話

「香束、治った?」 …出社して一番、俺宛の郵便を受け取るためにメール室に来て…これかよ。 ずらっと並ぶロッカーの扉には各部署の名前がついており郵便物やメールで発注した小さな文具、社内便の封書等がここに配布されるのだ。 同じく郵便物を受け取りに来たと思われる中黒。 三十センチ四方のロッカーのひとつに肘を付き、これはいつぞや見た後輩女子とのお喋りスタイル! 俺を通せんぼするなよな! でも朝からあーだこーだ言いたくはない。 「…まあな…だいぶいい」 あの日から二週間、だいぶ痛みも取れて…と言うより体の扱いに慣れて痛みを感じやすい動きをしなくなった。 これが一番効果あり。 「良かったじゃん」 「…ああ」 「何、ご機嫌ななめな感じ?」 「いつもと同じだよ」 「ウッソー」 …あぁ、イラッとする。 「分かった!悩み事あるんだろ。俺が聞いてやるよ。飲み行こ」 「ないし。行かないし。今飲めないし」 アルコールなんか回ったら痛みが増すだろが。 「そうなの?」 「そーだよ」 「なーんだつまんなーい」 中黒は足元に置いてあったピンク色の買い物カゴを腕に掛けてクルッと俺に背を向けた。 「…治ったら、行こうぜ。話、あるし」 「…治ったら、…な…」 諦めの悪い男に、俺の方が妥協した。

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