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第234話
「…本当にいいの?」
「もちろん。こうやって招待状も貰ってるからね」
真咲が首からぶら下げているネックストラップには緑色のカードが入っていて、そこには“ 御招待 ”と書かれていた。
ちょっと不安げに眉を寄せて半歩先を歩く俺の後ろを着いてくる真咲。
日曜日、俺は大型展示場に真咲とやって来た。
ここでは木曜日から企業向けの展示会を行っている。
新しい測定方法やその技術を駆使した測定機器。
正直な所、俺には畑違いもいいとこだ…。
だが真咲は俺とは違って医療系分析には興味があるらしい。
友人の会社が大規模な展示会に出展する、という話をしたら珍しく食いついてきたのだ。
「子供向けじゃないから少し難しいかもな」
「…うん」
真咲の肩をポンッと叩き、俺はにっこりと笑いかけた。
「よ、志摩」
「香束くん!」
手を振れば大柄な男が人懐っこい笑顔で近寄ってくる。
「来てくれたんだね!ありがとう!ん?その子かな」
「正解。ほら、挨拶して?」
「東藤真咲です。招待状ありがとうございました」
礼儀正しくぺこりとお辞儀をする姿…よしよし、いいぞ!
「うわ!しっかりしてるね!僕は事代堂志摩。香束くんとは大学の同級生だよ」
うわ…眩しい…。
子供相手でも容赦ない相変わらずの人誑しの笑顔…。
「真咲君は高校生なんだってね」
「はい」
「少し難しいかもだけど…説明しようか?」
「ありがとうございます!」
人見知りの真咲でも、志摩のスーパー人誑しスキルには勝てなかったか…。
真咲は志摩にお任せして、俺はその辺の椅子に腰を掛けて二人の姿を眺める事にした。
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