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第235話
企業向けの展示会で高校生である真咲の存在は少し異質だと思ったが、志摩の説明を嬉しそうに聞いている姿を見ると意外とそうでもないように思えてくる。
「俺は興味ないんだよな〜」
数学は嫌いでは無かったが、化学系の分野は余り興味が、無い…。
「志摩がいてくれて良かった」
俺じゃ説明とか無理だしな。
大きな分析機からコンパクトなものまで。
よくこれだけ展開するよ。
まぁ、大規模センターと各種機関じゃ扱う規模は桁が違うしな。
至極もっともらしい事を考えてみたが一体どれだけ需要があるんだろう。
「とと!」
「わあ!」
ぼんやり余所見していたらいつの間にか真咲が隣に座っていた。
「事代堂さんがお昼一緒にどうですかって!」
「うん、いいよ」
「やった!伝えてくる!」
パッと立ち軽やかに走り出す真咲。
「そんなに嬉しいのか?」
事代堂に、ちょっと…妬いた…。
「本当は違う所に入りたかったんだけど…」
三人でテーブル席に着き、志摩が申し訳なさそうに言った。
展示場近くの飲食店は軒並み混んでいて、すぐに入れそうだったのがここだった。
「俺はかまわないよ」
「僕、ファミレス初めてかも」
「え?そうなの?」
「あ、そう言えば…」
涼真と俺と当時まだ小さかった真咲の三人連れだとどうしても他人の目が気になるからってファミレスには行かなかったんだ。
ママはどうしたの?なんて話し掛けられたりしたしな。
そんな言葉を真咲に聞かれたくなくて…それに俺は料理できるし、自分で作った方が安くて美味い。
涼真も真咲も褒めてくれるから一石三鳥。
注文が決まると真咲は御手洗に行くと席を離れた。
「真咲くん、いい子だね」
「ああ、すごく」
志摩の、真咲を見る目は優しい。
「…ところで彼はどうなの?」
「うん。元気」
「良かった」
志摩は俺と涼真の事を知る数少ない友人なのだ。
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