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第236話

「今度会いに行ってもいいかな?」 「もちろんだよ。皆で来てよ」 俺だって志摩とそのパートナーの事は知っている。 志摩のパートナーは大学の先輩だしね。 「先輩、後遺症は出てないの?」 「もうすっかり。覚えていてくれたんだね」 「彼は?」 「うん。まあ、何とか」 志摩達は見ず知らずの子供を育てている。 “ 不思議な縁があるんだ ” そうは言ってたけど、それだけじゃ他人の子供を育てる理由には難しい。 きっと志摩と先輩の優しさが彼を受け入れているんだろう、と俺は思っている。 「真咲くん、医療系に進むの?」 「どうだろう…。医者志望の俺の姉ちゃんの息子と働きたいって言ってたけど」 「それじゃお医者さんになるの?」 「医者…とは聞いてない。薬剤師か、技師か…そんな所じゃないかな」 「ふーん。楽しみだね」 「ああ」 どんどんと光が弱くなっていく俺達とは違い、真咲は まばゆいばかりの光を放っている。 子供達の存在は輝いていて、少なからずともそれを目の当たりにする俺達にも幸せを分け与えてくれていた。 将来を想像する事がこんなに希望で満たされるものだなんて、知らなかった。 真咲の前を歩き、もう少ししたら並んで…そしてその後は、俺と涼真は真咲の後ろを歩いていくんだ。 「とと、にやにやしてる…」 いつの間にか真咲がテーブルに戻ってきていて、俺の隣に腰を下ろした。 「え?そう?」 「香束くん、そんな顔もするんだね。知らなかったよ」 「志摩!」 「あ、ご飯がきた!」 テーブルに並べられたたくさんの料理。 「志摩、相変わらずよく食べるよな…」 「うん…幸せだから、さ」 「そっか」 「いただきま〜す!」 家で待っている涼真の事をしばし忘れて三人で賑やかに食事をし、それから真咲と二人で家路に着いた。

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