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第238話

「何かあった?」 「…」 「俺に話せる?」 「…」 二つ目の質問に弱々しく首を振る涼真。 「そっか」 無理になんて聞き出したく無い。 「話せる時がきたら…で、いいから、さ」 シーツに散った髪を一筋摘んで、愛しく撫でた。 目が覚めてしまったと言い、涼真は真咲の待つリビングに俺とやってきた。 「父さん、ただいま!」 「お帰り、真咲」 涼真の姿を見て嬉しそうに笑う真咲。 「今日はね、凄く楽しかったの」 「機械だろ?どこが良かった?」 「凄いんだよ!一度に数十項目も測定出来て、一時間あたり数千件の処理能力があるんだよ!」 テーブルにバンッと手を着いて腰を浮かせ、珍しく鼻息を荒くしている。 「…うん」 問い掛けはしたものの、真咲のリアクションに涼真は軽く引いていた。 「デザインもね、カッコよくてね。事代堂さん、いつもあんなに凄いの見れちゃうんだ…羨ましい…」 …今まで控え目に…遠慮がちに生きてきたように見えた真咲。 まさかこんな所で興味を引くものが出来ようとは。 「真咲には難しかったんじゃないの?」 「事代堂さんが分かりやすく教えてくれたから…分かった気がする!」 志摩は優しい物言いだし、好きな物には一途だから難しい事もきっと噛み砕いて教えてくれたんだろう。 「そっか。お礼のメール送らないと、な」 「うん。そうしてくれたら きっと志摩も喜ぶよ」 「後で、ね」 そう言って俺から視線を外した涼真の横顔は、真咲とやり取りしていた時よりも、少し苦しげに見えた。

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