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第240話

「あ〜終わったぁ〜」 終業を知らせるチャイムを聞き、パソコンの電源を切った。 デスク周りの文具を引き出しに仕舞い携帯をカバンへ。 佐藤さんも中野さんもまだ仕事中で、山城さんは離席したまま。 「それじゃ、お先しま〜す!」 「お疲れ 」 「お疲れ様」 俺は残っている方々に挨拶をして速やかに廊下に出た。 早足でエレベーターホールに向かうがどこからか人の波がやって来てすぐには乗れそうにない。 「仕方ねぇな」 俺はいつものようにすぐ脇の階段を使う事にして人波をすり抜けた。 俺のいる七階から誰にも会うことなく軽やかに階段を降っていく。 誰しもエレベーターなんていう文明の利器があればそっちを使うのは至極当然だ。 「でも、気をつけなきゃなんだよ…」 それは仕事をサボっている奴に出くわす事が度々あったから。 いや、今は就業時間外だからそんな奴はいないが、女の子に壁ドンして横っ面を強か張り倒されてる奴に出くわした事が一度か二度…その気まずさたるや…。 見られたくないだろうがこっちだって見たくない! だからなるべく音を立てず、手摺の下を覗きながら降りていくんだ。 そんな事を考えながら降りていくと…あちゃ〜…今日も不穏な男女が人目を憚るように寄り添っていた。 「何だよ、こんな所でイチャイチャすんじゃねぇよ」 若干心の声が口から出たような気がしたが迂回するのも面倒なので俺は上からそっと様子を見る事にした。

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