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第243話
「とと、美味しい?」
「すっごく。衣もサクサクしてる」
何気ない夕食時の会話。
でも、いつもより涼真の口数は少ない。
「僕ね、土曜日は部活の友達と遊園地に行こうと思って。いいかな?」
「どこの?」
「トシマランド」
「いいじゃん、行ってこいよ」
トシマランドは中規模遊園地だ。
夏には流れるプール、冬場はマス釣りも出来る。
観覧車は無いが回転木馬はマニアが喜ぶ(らしい)年代物で由緒ある物だとか。
「いいじゃないか」
「楽しみ〜!」
「気をつけて行くんだぞ」
部活の友達か…。
そうだよな。
交友関係も広がって、この年頃なら毎日楽しいだろうな。
「ジェットコースター乗るの楽しみなんだ!」
「泣くなよ」
「泣かないもん!」
俺と真咲のやり取りを涼真は黙って見ていた。
「行ってきま〜す!」
土曜日朝七時。
リュックを背負い真咲は元気に出掛けていった。
その姿を見送ってから俺は涼真がキッチンを片付けてる間に手早く洗濯物を干し、リビングで軽く掃除機をかけた。
「悪いな。今コーヒーでも淹れるよ」
「サンキュ」
壊滅的家事能力だった涼真だが、ちょっとづつでも十年以上続けてきたお陰で人並みに家事がこなせるようになった。
凄い努力だと思う。
「アイスコーヒーで良かった?」
「うん、ありがとう」
並んでソファに腰掛けて冷えたコーヒーを喉に流し込んだ。
「ん!美味い!」
「…郁哉は褒めすぎ」
「そんな事、無い!」
だって、涼真はいつも頑張ってる。
空になったグラスをテーブルに置くと溶け残っている氷がカランとなった。
「ね、涼真…」
「…何…」
少し斜めから視線を寄越す涼真。
見つめあって、背中に腕を回した。
キュッと口を結んだ涼真の体温が、少し上がったのは気のせいなんかじゃ、ない…。
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