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第252話
夕方、真咲が沢山のお土産を抱えて家に帰ってきた。
初めて友達と遊園地に行ったのがよほど楽しかったのか今日経験した事を休む暇なく喋り始める。
俺と涼真は晩御飯の支度をしながら耳を傾けた。
「ジェットコースターがね、凄いんだよ。最新型じゃないのにすっっごく怖い!」
それ、古いタイプあるあるか?
「動くとカタカタカタカタ鳴ってね、いつ落ちるんじゃないかって、気が気じゃなかった!」
「そっちの恐怖かよ!」
涼真が嬉しげにツッこんだ。
その楽しみ方はどうなんだろう…俺は若干の疑問を持ったがどんな状況でもエンジョイ出来たならいいのかな…。
「そういや俺達も昔トシマランドに行ったっけ」
「…そうだな」
「真咲位の歳だったよな。で、ジェットコースター乗ってその後涼真具合悪くなってしばらくベンチで休んだっけ」
「ああ。あの時は確か四人で…」
涼真の言葉が不意に止まった。
…四人…。
そうだ、…あの日は四人で行ったんだ。
乗り物は二人づつペアが多いから三人だと一人あぶれるね、って言って。
俺と涼真と咲百合と…それから…。
「父さんと とと、仲がいいよね」
ドキッ…!!
手に持っていたオタマが指を離れ、床に転がった。
ええ?このタイミングで言う?
「郁弥…何してんだ?」
「あ…あぁ、すまない…」
慌てて落ちたオタマを拾い、流しで洗う。
「俺達は幼馴染みだからな、郁弥」
「…う、うん」
「それでも…やっぱり仲いいよ」
仲がいい…、幼馴染みは事実だが俺は…いや、俺達は愛し合ってるから。
だがそんな事を真咲には言えない。
真咲の人格形成期に…まだマイノリティがハッキリとしていない時期に…俺達の事を言う訳にはいかない。
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