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第254話
「あれは…高校生の時だったな…」
卒業してから約二十年、わ、俺年取ったなぁ…と感慨深く思いながら遠い昔を思い出す。
あの頃は涼真の傍にいるのが辛い時期だったからトシマランドに行った日は最高に嬉しくて…辛かった。
二月の寒い日、学年末の定期テストを終えて俺達は初めて子供だけで遊園地に行った。
きっかけは…。
…思い出せない。
だけど寒い寒いと口々に言いながら酷く楽しかったのだけは覚えてる。
「俺が涼真を迎えに行ったら咲百合はもう涼真の家に来ていて“ だって、待ちきれないんだもん! ”とか言ったっけ」
長い髪のサイドを三つ編みにして、お気に入りのワンピースを着ていた咲百合。
“ こんなに寒いとコートが脱げない “ってブツブツ言ってたのを涼真が宥めていたっけな。
二月の終わり、いつもなら試験休みの子供達や大人達で賑わうこの場所だが、酷く寒い平日だったせいか遊びに来る人はあまり多くなくて開場時間を一時間も過ぎてから慌てて入場した俺達はやや拍子抜けをした。
「開園九時なのに十時頃入園したよな…なんでだっけ?」
記憶力はそれほど悪くない。
だが思い出が風化を始めたようで記憶が虫食いになっていた。
「あれあれ!パイレーツに乗った涼真の顔…ふふ、思い出した」
涼真を挟んで横並びに座席に座り、空中の高い所でフワッと止まる度に涼真の顔が引きつっていったっけ。
それでも空中ブランコに乗ったりお化け屋敷に入ったり…今思えばどれも涼真が得意ではなかったものだらけだ。
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