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第255話

トシマランドのジェットコースターは他のレジャー施設に比べるとそれほど有名ではなく目新しさを欠いたものだったが、高校生の俺達の興味を引くには充分だった。 咲百合は怖いもの知らずの性格からか早く乗りたいらしくて、今思えばどんどんとそっちに向かって歩いていった。 そんな咲百合の勢いに気後れする涼真。 「俺、怖い…」 咲百合に聞こえない位の声で涼真が呟いた。 「じゃあ乗らなくていいんじゃないの?」 「…でも…みんな楽しみにしてるし…」 「空中ブランコだって、あんまり楽しくなかったんじゃない?」 「……うん」 先頭を意気揚々と歩く咲百合とは対照的に、遅れて後ろを歩いていた涼真。 俺は涼真が嫌なことはさせたくは無かった。 「東藤くんジェットコースター嫌い?」 振り向くと肩まで延びた黒髪が踊るように揺れた。 「嫌い…じゃない…と思う」 「なら乗りましょうよ。案外楽しいかもしれないわよ」 「…」 「咲百合と乗ってくれば?俺と涼真は見てるよ」 「せっかく来たのに?ふふ」 勝ち誇ったように笑う。 「無理にとは言わないけど、ね」 「美織、早く行こう!」 「行く行く!咲百合!」 艶やかな髪をなびかせて女子が二人、ゲートに向かって走っていった。 そんな二人に触発されたのか涼真も走り出した。 「俺、乗ってみる」 「乗らなくていいだろ?」 「だって、郁弥は乗ってみたいんじゃないの?」 「…でも…」 「大丈夫だって。それに乗ったら案外イけるかもしれないし」 今になってみれば困ったように微笑む涼真には悪かったと思うが、俺は涼真にそう言って貰えて心底嬉しかった。

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