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第257話
「何でいまさら?小さな子供のうちならわからないでもないのに?」
再び涼真は大きなため息を吐いた。
「初めてじゃ…ないんだ」
「え?」
「真咲と二人になってから…ずっと言われてて」
大きくなってからはほとんど無かったんだけど、そう言ってる涼真は布団の上に立てた膝に顎を乗せて、まるで子供みたい。
「知らなかった」
「郁弥には迷惑かけたくなかった」
迷惑だなんて思う訳ないだろ。
もっと早く知りたかった。
「断ったんだろ?次に言われたらふざけんな、って言ってやれよ」
「そうだな、次はそう言ってやる」
力なく笑って涼真は目を閉じた。
「ね、涼真…」
俺は涼真の顎に指をかけてこっちを向かせ、ゆっくりと唇を重ねた。
涼真はちょっとだけうっとりとした顔を見せたが、すぐにその表情は曇った。
そんな顔、させたくなかった。
「郁弥…ぁ…」
もう一度。
今度は触れるだけではなくて、もっと深く交わるようなキスをした。
涼真と真咲には笑顔でいて欲しい。
俺が出来ることならなんでもしてあげたい。
「…ん…ぅ…」
涼真の舌を甘く噛み溢れる唾液を啜った。
歯列を辿り口腔中を余すところなく味わい舌の根元まで、さらにその奥へ…
…奥へと…
「…んぐッ…」
「…ご…ゴメン!」
「…はぁ…がっつきすぎ…」
「うん…」
「あ…」
ドアの向こうで扉の閉まる音がした。
「真咲出たみたい。風呂ってくる」
「あぁ…うん」
替えの下着を掴んで涼真が部屋を出て行き、俺は一人で涼真の部屋に残された。
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