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第260話

「はーッ、フーッ!」 怒りで興奮が治まらない。 俺は会議室のドアを乱暴に閉めて廊下の壁に一発くれてやり、それから…項垂れた。 「いきなりそんな事言われて、ハイそうですかって言えるか!」 吐き捨てるように言って、再び怒りが湧く。 「チクショウ!」 人目なんか気にしないで叫びたい…。 …しないけど。 「お、どした〜?暗いね」 悶々とどす黒い怒りに囚われている俺に声をかけてくる男。 「…うっせえ」 「わ、荒れてる…」 この状態でそのテンションには付き合えない。 俺は不機嫌オーラ全開で中黒と向き合った。 「何だ何だ?話してみろよ、スッキリするかもだぜ」 ニヤニヤしたその表情がさらにムカつく。 「お前にする話なんてねぇよ!」 「うわー、マジで機嫌悪ッ!余計に気になるんだけど」 目の前に立つ中黒を片腕で退かし、通り過ぎようとしたが中黒は引かなかった。 強い視線で俺を見つめ、低い声で言った。 「いいから来いよ」 逆に痛いくらいに腕を掴まれてどこかに引きずられて行く…。 「ほらほら、ちょうど二人っきりだしさ、お兄さんに話してごらん?」 「…だから無いって言ってんだろが」 「…あのさ、そんな人を取って食おうみたいな顔してたら気になんじゃん?」 俺、そんな顔してた? 「別に人なんか食わねぇよ」 「まぁまぁ、例えだって」 じっと俺の目を見つめる中黒はさっきとは違い、茶化す様な感じは消えていた。 代わりに俺を心底心配しているようにも見える。 「…大切に育ててるのに横からかっ攫おうとしてる奴がいんだよ」 「ふーん」 「だから、ふざけんなって言った」

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