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第262話

荷物を取りにデスクに戻るとそこには山城さんの姿は無くて、中野さんが一人パソコンの画面を見つめていた。 「あれ?まだかかる感じですか?何か手伝いましょうか」 「いや、もう終わるんだけど…」 「資料作りですか?」 中野さんに近づきヒョイと画面を覗いた。 これ、どこかの企業の会社概要…? 「佐藤さんが…」 「…佐藤さんが?」 「何かおかしいから調べてって言ってさ」 CEOはミケネコ…じゃない、ミケランジェロ・ジェラ…だかジェロ…だか? もう名前すら理解出来ない…。 「ここはね、ウチの関連企業なんだけどさ。聞いたことない?」 「…あ!思い出した!ヨーロッパの拠点の一つで…」 「うん、そう」 俺がアメリカにいるン十年前、そう言えばヨーロッパからもお客さんが来てたなぁ。 「でさ、そこの研究員に山城さんの名前があったんだ」 「は?」 「まあ今回の人事は交流みたいな意味合いがあるって聞いてたけど…ちょっとね」 格上が格下をわざわざ見に来るか? 「どーゆー事なんですかね」 「さあね。ま、何となく分かったし帰るよ」 開いていた画面を次々と閉じ、中野さんが帰り支度を始めた。 「香束、まだ居たんだな」 「ええと…まあ…」 「早く帰れよ」 ポンと肩に手を置いて中野さんはさっさと出て行った。 「ヨーロッパの拠点で研究…そんな人がこんな所に何しに来んだよ」 そう言ってみても、彼女がここに来る理由は一つだけなんだと頭の片隅では理解していた。

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