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第267話

『真咲の父親は息子だ』 大崎先生の母親は咲百合の産んだ子供が先生の子供だと言って、咲百合の葬式の後から涼真に付きまとっていたらしい。 なぜそれを彼女が知っていたのか…咲百合がすでにこの世にいない以上、答えは永遠に闇の中だ。 だが大崎先生の母親は亡き息子の形見である真咲を手元に置きたいと執拗に涼真の元を尋ね、繰り返しああ言っていたらしい。 それでなくとも涼真は家事能力が恐ろしい程に皆無。 それを知っている涼真の母親は彼女に絆されたのか、もういっそ渡してしまえばいいのでは…と涼真に言ったそうだ。 怒った涼真は自分には味方はいないのだ、とそれまで身を寄せていた実家を出ていき単身で幼子を育て始め…行き詰まった(であろう)所で俺が強引に同居に持ち込んで今日に至ったという…。 転居先が分からなくなったのか、俺と同居してから招かざる訪問者は来なくなったのだが真咲が小学校にあがる前年、突然ランドセルが送られてきた。 けれど送られてきた、だけ。 他に何のアクションも無く、俺と涼真はそれを納戸の奥にしまって忘れていた。 それなのに今になって…もういい加減に諦めてもいいんじゃないかって程時間が過ぎているのに、再び真咲を欲しがる人がやってきた。 「警察に言った方がいいんじゃないか?」 「んー…でも事を荒立てたくない…」 「そのうち真咲を攫うんじゃない?」 「…まさか…」 目の前の涼真の顔が苦悩の表情へと変わっていった。

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