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第272話
それは俺と涼真の、どちらかというとあまり一般的ではない関係性が他人に知られる、という事だろうか。
だが俺は…正直に言ってこの関係をある程度の範囲でオープンにしてもいいと思っていた。
だが真咲は別だ。
まだ未成年の彼の環境を乱すような真似は絶対に出来ない。
だから、真咲が大人になるまでは涼真との関係は二人だけの秘密…。
「この事は東藤には言ってないけど、もしかしたらもう…」
「中黒、ありがと!」
とりあえず礼を言って俺は中黒に背を向け歩き出した。
ここを出てまず涼真に知らせて…いや、山城さんの所にも行かないと…。
「香束!上!」
「え?」
勢いをつけて動き出した矢先、頭に強い衝撃が。
ガツンと脳ミソを直撃した痛みは目の奥をチカチカさせ、パァァっと火花が散った。
…ああ、そうか…
俺、階段の下にいたんだ…。
自分の体がぐらんぐらん揺れて、必死に手を伸ばし何かを掴んでぐいっとひっぱった。
だがそこまで。
カクンと意識が暗闇に落ちた。
だがすぐに目が覚めたと思う。
痛みを伴ってドクンドクンと脈打つ感覚で気がついた。
「痛〜…何だよもう…」
体の向きを変えようにも自由がきず、しかも埃っぽい。
「大丈夫か?」
「…中黒?」
中黒の顔が心配そうに俺を見ていた。
「頭ぶつけて脳震盪起こしたみたいだな」
「だからこんなに痛いのか」
ゆっくりと頭を動かして周りを見ると、俺は不本意にも中黒に膝枕をしてもらっていた。
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