狭い空間で倒れれば、そうもなるか。 「悪い…膝枕なんかさせて」 「あ…うん、それは大丈夫…うん。…頭…頭は…大丈夫か？」 すぐには起き上がれない俺を見たことも無い心配そうな顔で見下ろす中黒。 「えっと…大丈夫か…じゃなくて、痛むかって聞いて欲しい…」 「それだけ言えんなら大丈夫だな！」 フイッと俺から目を逸らし、部屋の天井の隅を見上げる中黒。 …くっそ！怪我人にも容赦ねぇな。 それより早く涼真の所に行かないと…。 「危ない！」 体を起こして中黒の言葉とほぼ同時に回る世界…。 「おっと、まだ動くなよ。倒れんぞ」 「あ…目がまわる…」 「ほらな」 勝ち誇ったように笑う中黒。 だがその顔はなぜだか憎めなくて、出会った頃の中黒を思い出した。 「ほんと…暑苦しくて悪いな…」 俺一人だって、身体を伸ばしきれない(膝、肘を曲げている)狭い空間でする膝枕ったら、必要以上に身体が密着するだろ？ 可愛い女の子だったらまだ良かったんだろうけど…無理なことを言ってもしょうがないか。 「別に…いいんだ、俺は…あッ！」 「えッ？」 体温が離れて気がついた。 手…握られてた…え？ 「ほら…倒れると不安…とか…なぁ？周りは心配する…だろ？」 急にシドロモドロで話し出すのは何故だろう。 「あぁ、ありがと」 もとより涼真や真咲と手を繋ぐ習慣がある俺はビックリしないけどな。 さっきよりやや血色のいい中黒はその後は何も言わずに俺に膝を貸し続けてくれた。